先物取引とは?

投資の上級者ともなれば、先物取引を行う人は珍しくない。

特に、利上げによって株式市場全体が下落ムードに包まれている現状においては、非常に有効的な取引と言える。

なぜなら、先物取引は現物取引と違って、空売り(ショート)を行える為、下落相場でも問題なく利益を上げられるからだ。

株式を長期保有していれば、コロナショックのように突発的な急落相場が訪れる事もあるだろう。

そこで現物の買い持ちと、先物取引による空売りポジションを両立する事で、現物の含み損を軽減する事が可能だ。

今回は、先物取引の概要と仕組みについて見ていこう。

先物取引とは?

先物取引とは、将来のある時点で現物(原資産)を売買する約束をするものである。

ここで言う原資産には、株式・債券・商品など多岐にわたる。

現物取引との違いについて説明しておこう。

現物取引は売買する時点でお金を用意しておく必要がある。そして、売買する時点での価格でしか売買は成立しない。

一方で、先物取引は実際に売買する予定日、この日を期日と呼ぶが、期日が来るまでは売買代金を手元に用意できてなくても問題ない点である。また、先物取引は現物取引と違って、現在のリアルタイムの取引価格ではなく、事前に決めておいた価格で将来取引が可能である仕組みだ。

他にもレバレッジを駆使して手元の金額よりも大きい金額で取引することが可能な為、巨額のリターンを手にするチャンスがある。

さらに、信用取引と同様に、いきなり売りからスタートすることが可能であり、下落相場でも利益を確保できる手段がある点も魅力的だろう。

先物取引のイメージ

次に、先物取引の一連の流れについてみてみよう。

例えば、2022年12月限の金先物を1500円で1枚(1000g)を買い建てたとする。

商品先物取引の決済は、「受渡決済」と「差金決済」の2種類の方法が選択できるが、ここでは差金決済を前提として進めていく。

差金決済では、現物を実際に購入する訳ではないので、一般的には「買い建てる」という表現を用いる。

 

これは、2022年12月の期日に、金1枚を1g当たり1500円で買う約束をした事を意味する。

先物の取引単位は1枚を基本とし、金1枚とは金1000gを指す。

また、金先物の取引価格の表示は、1gあたりの価格が提示されている。

つまり、実際の取引にかかる金額は、1500円×1000g=150万円となるが、期日(12月)までは用意できてなくても問題ない。

とはいえ、12月に150万円の金を購入する約束をしたにもかかわらず、いざ12月になって150万円用意できなかった、なんて事態になると大変困る。

そこで委託証拠金というワードが出てくる。

これは、将来における約束の履行を担保するために、一定金額の預け金が必要であり、この預け金が委託証拠金である。

また、差金決済の場合は期日においても150万円を手元に用意する必要はなく、事前に取り決めた購入価格(150万円)と、決済日の市場価格の差額のみで、損益が決定される。

仮に、決済日の市場価格が130万円に低下していた場合、自分は150万円で金を買ったのに、市場価格は130万円で取引されているので、20万円分の損失が発生する。

このように、自分の思惑とは逆行する形で損失が出ることに備えて、委託証拠金を口座に預けておく必要がある。

この委託証拠金については、証券会社によっても異なり、その時々の市場動向によっても左右されて決まる。

この仕組みによって、手元に150万円という大金を用意できなくても、一定金額(10万円~30万円程度?)の証拠金を預けておくだけで、150万円相当の金額を取引し、大きなリターンを得られるチャンスがあるのは投機家にとって魅力的なのである。

先物取引が、あらかじめ取り決めておいた価格で、将来売買を行う約束事であることは理解してもらえたと思う。

先ほどは、期日になると実際に売買を行うという説明をしていたのだが、実は期日が来る前であっても任意のタイミングで自由に売買が可能である。

もう一度先ほどの例を出すが、「 2022年12月限の金先物を1500円で1枚(1000g)を買い建てた 」ケースでは、2022年12月の期限が来る前、つまり2022年10月や11月であっても取引は実行できる。

事前に取り決めた約束の反対売買を行うことで、期日が来る前に約束を果たす(解消)ことが可能となり、これを手仕舞いと呼ぶ。

上記の例だと、 金先物を1500円で買い建てた約束を、売るという反対売買を行うことで、手仕舞いできる。

この場合でも、期日決済の時と理屈は同様で、事前に取り決めた購入価格150万円(1500円×1000g)と、取引したその時点の市場価格の差額によって、損益が決定する。

つまり、その時点での市場価格が1500円より高ければその分利益は上がる一方、市場価格が1500円を下回ると損失が出るため、預けていた証拠金から強制的に補填する形で差し引かれる。

 

先物取引では、現物取引では不可能な空売りを行うことができる。

この仕組みは本当に便利で、バブル崩壊などで市場全体が下落相場に陥っている時でも、さらなる下落に賭けて空売りを入れる事で、利益を出し続けられる。

最近では、長期積み立て投資が流行っているので、多くの素人投資家は現物の株式を買って保有し続けるスタイルである。

ただし、長期積み立て投資は数十年先まで保有株式を売らない為、相場が暴落すると短期的に資産評価額が大きく目減りしてしまうのだ。

そのリスクヘッジとしてお勧めなのが、この先物取引の空売りという選択である。

 

それでは、こちらも例を挙げて空売りの一連の流れを見ていこう。

2022年12月限の金先物を1400円で1枚(1000g)を売り建てたとする。

これは、2022年12月の期日に、金1枚(1000g)を1gあたり1400円で売る約束をした事を意味する。

現物取引であれば、金(現物、ETFなど)を保有しておく必要があるが、先物取引では2022年12月の期日までは手元になくてもよい。

そして、買い建ての時と同様、委託証拠金を預けておく必要がある。

決済方法が差金決済の場合、12月の期日が来ると、事前に取り決めた売却価格1400円と、その時点の市場価格との差額によって、損益が決定される。

自分の想定通り、市場価格が1400円を下回っていれば、その分だけ利益が得られ、逆に1400円を上回っていれば損失となり、証拠金から差し引かれる。

なお、空売りも買い建てと同じく、期日が来る前であっても任意のタイミングで、反対売買を行うことで手仕舞いが可能である。

レバレッジの危険性

先物取引は少ない元手で大金を動かせるのが魅力的なポイントである。

しかし、それは相応のリスクと引き換えに実現しているものである事を認識しておかなければならない。

例えば、金先物1枚を1g1500円で購入した後、1g1350円まで下落したケースで考えてみよう。

この取引において、委託証拠金が10万円の場合、レバレッジは15倍かけている計算になる。

さて、1500円から1350円に価格が下がると、実際にはいくら含み損が出てしまうのだろうか?

10%の下落率で損失額は15万となるので、この時点で委託証拠金が不足するため、ポジションは強制清算される事になる。

そして恐ろしいのが、上記の例ではマイナス分の5万円を補填するために、追加で支払う義務が生じる点である。

これを追証(おいしょう)と呼び、投資元本(ここでは委託証拠金)を超える損失を出す可能性があるところが、先物取引の注意すべきポイントだ。

 

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