パラジウム(Palladium)の解説

  • 2021年8月15日
  • 2021年8月15日
  • 貴金属

貴金属の一つである、パラジウムという金属をご存じだろうか?

プラチナに匹敵するほど希少性がかなり高く、また貴金属の中でも価格上昇の勢いが最も早い銘柄である。

埋蔵量も産出量も少ない上に、工業としての需要が高まり、今一番注目されている貴金属と言えるだろう。

その割には、あまりパラジウムへ投資している人をあまり見かけない。

是非とも、興味深いと思った人は、パラジウムについて学んでおこう。


この記事では、パラジウム投資のメリット・デメリットについて解説していく。

パラジウム(Palladium)とは?

原子番号46、元素記号Pd

パラジウムの主な用途としては、全体の9割は工業用の材料として活用される。中でも、自動車触媒としての需要が大半を占める。

残りの1割は、宝飾品として使われている。

パラジウムの産出国として有名なのが、南アフリカとロシアの2か国が全体の過半数を占めている。

南アフリカでは、先進国のように採掘技術が発展しておらず、また労働者や電力の不足、採掘作業をする上での作業員の安全確保の不十分さなど、課題がいくつかあると指摘されている。

その為、産出量が思うように増えず供給が滞りやすいので、結果的にパラジウムの価格が上昇傾向にあるようだ。

メリット

1. インフレ対策に有効的

世界各国の中央銀行は、経済が激しく落ち込む度に、その救済策として量的金融緩和という金融政策を打ち出してきた。

そして、2020年のコロナショックによる経済的損失をカバーする為、どこの国も歴史上最大規模の量的緩和を行っている。

量的緩和の詳しい解説は、下記のサイトに書いてあるので、そちらを参照してもらいたい。

 

長期的には物価上昇トレンドが継続すると思われ、そうなれば生活は当然苦しくなる事が予想される。

 

使わないお金を銀行口座に貯金しているだけでは、0.001%という僅かな利子しか付かない。

それなのに何故、大切なお金を無意味に預金するのだろうか?

 

物価や税金が高くなる以上、我々も資産を少しでも増やす努力をしなければならない。

インフレ対策として、パラジウムは有力候補に挙げられる。

 

下記は、パラジウム価格の長期チャートである。


2020年のコロナショック時に暴落したものの、長い下髭で反発され、歴史上最高値を更新している。

前回の記事で紹介したプラチナも、パラジウム同様、自動車の触媒として活用されていたが、プラチナはそこまで上昇していなかった。

この差はやはり、パラジウムの産出量の低さにある。

主な産出国である南アフリカでは採掘技術に問題があり、ロシアはアメリカからの経済制裁への報復として供給を減らしているからだ。

このような政治的背景も投資をする上では無視できるものではなく、パラジウムの価格に多大なる影響を与える事だろう。

パラジウムはGold、Silverと同様、世界基軸通貨である米ドル建で価格が表記されており、米ドルとパラジウムの取引が最も活発である。

量的緩和が続く限り、米ドルの価値棄損を危惧した投資家が、資金の一部をパラジウムに回す動きも想定され、価格はより一層上昇を続けていく可能性も十分にあり得ると思う。

 

この予測が正しいのであれば、インフレ対策の一環として日頃からパラジウムを買っておけば、価格が大きく上昇していく事で自分の資産の増加も期待できるだろう。

2. 希少価値が高い

先程も話した通り、パラジウムはプラチナに匹敵するほど希少性が高いと言われている。

現在世界で採掘されているパラジウムの産出量は年間約210トンであり、これはGoldの15分の1に相当する。

 

産出量はロシアと南アフリカによって、容易にコントロールされる状態であり、供給不足はしばらくの間続くことが想定されている。

 

自動車産業で、パラジウムの需要が強く伸びていければ、パラジウムの価格自体もさらなる上昇が期待される。

BRICsを中心とした、経済成長率が今後高まってくると期待される途上国では、自動車の需要も増える一方だろう。

そうなれば、貴重な資源であるパラジウムへ投資する価値は十分にあると思う。

このようにパラジウムは希少性が高まる可能性があり、それを知っている投資家による買い占めが行われることで、今後もより価値が高まっていくと考えられる。

3. 世界共通の価値

パラジウムの価値は、日本国内のみならず世界共通と言える。

日本円は日本でしか使えず、米ドルは基本的には米国でしか使えない。(一部例外あり)

その国が発行する通貨の価値とは、その国の経済力や財政状況に大きく依存してしまう。

 

日本政府の借金が膨大になり、仮に財政破綻した場合はどうなるだろうか?

日本でしか使えない日本紙幣は、文字通りただの紙屑となり、その紙は海外に持って行っても決済に使えない。

つまり、どれだけ沢山のお金を稼いだとしても、そのお金を全て日本円で保有しているなら、ある意味リスクが高いと言えるだろう。

しかしパラジウムに関しては世界中で需要があり、価値が高いと希少な金属である。

その為、日本紙幣が紙屑になったとしても、パラジウムを保有さえしていれば海外に行った際、パラジウムを売却し現地通貨を受け取る事ができるだろう。

少なくとも、一文無しにはならずに済むという訳だ。

デメリット

1. 利息や配当は一切なし

当たり前だが、パラジウムは株式や債券と違って配当や利子も付かないので、資産の増加スピードはそこまで早くない。

 

これが、パラジウムなどの貴金属が敬遠される一番の理由ではないだろうか?

昨今は、どこの国も超低金利が続いており、銀行預金の金利も低く、預けていても利式がほとんど付かない状況である。

このように低金利な状況が続けば、パラジウム価格は伸びやすいと言えるが、仮に今後預金金利が大きく上昇するような事になれば、金利を欲しがる投資家は、利子の付かないパラジウムを売却し預金をしたり、債権を買う流れが出てくる事も想定される。

その為、政策金利の変動には注目していく必要があるだろう。

2. 景気が悪いと下がりやすい

一般的にパラジウム価格は景気が良い時に上がりやすく、景気が悪くなると価格が下がる傾向がある。

 

パラジウムの主な用途が、自動車産業や工業の材料として活用されているからだ。

経済状況が良く、企業が自動車を大量に製造する際は、パラジウムの需要も連動するかたちで伸びるので価格も上昇しやすい。

逆に、経済状況が悪くなると自動車製造におけるパラジウム需要が激減してしまう為、価格もつられて下落しやすい。

 

実際に、2020年3月のコロナショック時のパラジウム価格を見てみよう。


コロナショック発生時は、世界各国で緊急事態宣言やロックダウンが行われ、経済活動が一時的にストップしていた。

その為、自動車の製造ラインが止まり、自動車を買いたいという需要も大きく低下してしまった。

それと同時に、パラジウム価格も大きく値を下げ、高値から大きく下落する格好となった。

これらの観点からパラジウム価格を予測する上では、経済状況について詳しく理解しておく必要があるだろう。

3. 本当にパラジウムの需要は高まるのか?

パラジウムの主な用途は、自動車の触媒コンバーター(有害物質を無害化する装置)に活用される。

ディーゼル車やガソリン車、どちらでもパラジウムは活用されてきたが、歴史的にはプラチナはディーゼル車を、パラジウムはガソリン車を活用するケースが多いとされていた。

ディーゼル車はガソリン車よりも燃費効率が良く、その分温室効果ガスを削減できると言われていたが、2015年にフォルクスワーゲンのディーゼル車に排気ガス不正問題が発覚したことで、再度ガソリン車の売り上げが復活してきている。

これにより、パラジウムをメインとして活用するガソリン車の売り上げが好調になれば、パラジウムの需要も伸び価格上昇が期待されている。

実際、パラジウムの価格はコロナショックで急落したものの、一直線上に上昇し続けており、プラチナ価格を遥かに上回っている。

これは一見すると、投資家にとっては素晴らしい投資対象のように思えるかもしれないが、懸念すべき点もある。

 

パラジウム価格がこのまま急騰し続ける以上、ガソリン車の製造コストも高くなり、売り上げが伸び悩むリスクも考えられる。

となると、現在価格が比較的安いプラチナを代替として採用する企業は増えてくる可能性は十分にあるだろう。

それに加え、パラジウムは産出量が極端に少ない為、今後はより入手するのが困難になる恐れがある。

自動車を大量に製造する企業は、パラジウムの代わりとなる代替素材を検討し始めると思っておいたほうがよいだろう。

とはいえ、まだこれからどうなるかは分からないので、引き続き自動車関連の話題には注目しておいて動向を追っておきたい。

4. 為替差損のリスク

国内のパラジウム現物価格は、国際価格に連動するようになっている。

その国際価格は、米ドル建で表記されるの一般的の為、国内金価格も米ドル円の為替相場に影響される。

結論から言うと、ドル安になればなるほど、円換算した資産評価額が落ちる事になるし、ドル高になれば資産評価額は上がる。

パラジウム価格そのものが上昇したとしても、ドル安が想定上に進行した場合、為替差損によりリターンはあまり伸びない可能性も考えられる。

 

米ドル円の価格推移を見ておこう。


短期的には上昇しているものの、長期的に見ると米ドルは下落トレンドが続いているようにも見える。

左とチャートパターンが似ているが、同じような値動きをすると仮定した場合、85円近くまで続落する可能性もある。

このように、長期にわたってドル安相場が続いていくなら、パラジウム投資のリターンも円換算してみると、それほど利益が伸びない懸念もある事に注意すべきだ。

hiroの見解

今回は、パラジウム投資のメリット・デメリットについて解説してきた。

私は個人的に、パラジウムの希少性や将来性を評価しているし、現物を買っておきたいと考えている。

しかし、今はまだ現物を一切保有していない。というのも、価格がほぼ一直線に上昇し続けているので、急落が怖くて手を出せなかったからだ。


パラジウムの現在価格は、最高値からやや下落してきたものの、まだまだ高値圏を維持している。

Gold(左側)と パラジウム(右側)のチャートを見比べてみよう。

Goldもパラジウムも同じようなチャートパターンを描いており、どちらも割高のようにも見える。

もし今後、FRBがテーパリングや利上げを開始した影響で、貴金属市場が下落する場面があれば、安くなったタイミングを見計らい買いに行く戦略を立てている。

いずれにせよ、世界人口が永久に増加し続けるのであれば、埋蔵量に限りがある貴金属の価値は上がるしかないだろう。

皆さんも、将来の危機に備える為、パラジウム投資の検討をしてみてはいかがだろうか?

まとめ

  • インフレ対策に有効的
  • 希少性が高い
  • 世界共通の価値
  • 利息や配当は付かない
  • 為替の影響が懸念点

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