反米国家はGoldを買い集めている

リーマンショックより以前から、世界各国の中央銀行は量的金融緩和を推し進め、2020年のコロナショック以降、正気の沙汰ではないほど大規模な紙幣印刷を続けている。

量的緩和の詳しい解説記事は、下記のサイトを参照してもらいたい。


どこの国も債務が積み上がり、借金返済には苦労している事だろう。政府は返済負担を少しでも軽くする為、政策金利を引き下げ、今ではほとんど0金利状態が続いている。

 

Goldは金利も配当もつかず、あまり魅力的に感じない銘柄ではあるが、この低金利な世の中では預金や債券を持っていても大したリターンは望めない。
どちらも利子が付かないのであれば、借金が無尽蔵に増え続ける国の通貨などより、歴史的に信頼度が高いGoldの評価が見直されている。

 

産金業界団体ワールド・ゴールド・カウンシル(World Gold Council、WGC)の発表によると、近年ロシアと中国を筆頭とする反米国家がGoldの保有を増やしている動きが確認されたようだ。

 


どこの国も外貨準備として、為替介入や外貨建債務返済に充てる為の資産を保有している。
その資産の内訳は国によって大きく異なり、日本は米国債を大量に保有する一方で、中国・ロシア・トルコなどは米国債を売却し続け、その代わりにGoldを買い集めている。

 

ロシアと米国は相変わらず関係が悪く、また中国に関しては米中貿易戦争と呼ばれるほど、かつてないレベルで緊張度が高まっている。
アメリカは敵対国家に対して、金融や経済、あらゆる力を駆使して制裁を下し、他国の経済をコントロールしようとしてきた経緯がある。

 

強国であるロシア・中国もアメリカからの制裁を長年受けてきた身で、アメリカとの金融面での関係を断ち、制裁による影響を少しでも抑えようとする目論見がある。
アメリカの法定通貨米ドルは、世界の基軸通貨として認知され、その信頼度や利用度は世界で一番と言われているが、現在のアメリカ政府の債務は膨大になっており、アメリカとしても債務負担は少しでも減らしたいところ。

 

その弱点をつくように、ロシア・中国は大量に米国債を売却することで、米国債利回りを上昇させ、米国の債務金利の負担を上げることで、米国へ圧力をかける狙いがあるようだ。
ちなみに、中国はGold産出量が世界でNo.1だが、国内で産出されたGoldは国外に持ち出すことは許さず、その大部分を中国政府が掌握しているとも言われている。
 
ロシアに関しては、Gold産出量が世界No.3であり、ロシア政府の外貨準備として米国債売り・Gold買いの流れが続いている。
ロシアの経済状況は芳しくなく、自国通貨ルーブルの価値が長期下落トレンドから未だ抜け出せていない。

 

ロシア法定通貨ルーブルの価格を、米ドル建で見てみよう。

 


見ての通り、ひどい下げ方である。これは、ルーブルが一方的に売られ続け、米ドルが買われ続けている事を示す。

ロシアにとって、通貨価値の極端な下落は、ロシア国内の物価上昇(インフレ)を意味する。

 

経済成長が続いているのならともかく、そうでない以上、ロシア国民は生活が苦しくなる一方だろう。
そうなれば、ロシアのプーチン大統領は支持率低下の危機に見舞われる事になる。

 

加えて、世界基軸通貨である米ドルをアメリカは思うがままに操作できる為、ロシアとしては米ドル依存からは何としても脱却したいと考えているはずだ。
ルーブルの価値を安定化させる為にも、自国の外貨準備としてGoldの割合を今後も増やしていくのではないだろうか?
 
現在の各国政府の外貨準備におけるGoldの割合を見ておこう。下記は、Goldの保有量が多い順番に掲載されている。

 

1位 アメリカ 金の保有量(金準備):8133.46トン(うち外貨準備に占める金の割合:75.8% )

2位 ドイツ 金の保有量(金準備):3366.77トン(うち外貨準備に占める金の割合:71.7% )

3位 IMF(国際通貨基金) 金の保有量(金準備):2814.04トン(うち外貨準備に占める金の割合:なし )

4位 イタリア 金の保有量(金準備):2451.84トン(うち外貨準備に占める金の割合:67.4% )

5位 フランス 金の保有量(金準備):2436.07トン(うち外貨準備に占める金の割合:62.2% )

6位 ロシア 金の保有量(金準備):2206.99トン(うち外貨準備に占める金の割合:19.3% )

7位 中国 金の保有量(金準備):1926.53トン(うち外貨準備に占める金の割合:2.7% )

8位 スイス 金の保有量(金準備):1040.00トン(うち外貨準備に占める金の割合:5.8% )

9位 日本 金の保有量(金準備):765.22トン(うち外貨準備に占める金の割合:2.6% )

10位 インド 金の保有量(金準備):618.16トン(うち外貨準備に占める金の割合:6.6% )

世界各国が保有する「金(GOLD)」について より引用


この表を見てみると、米国や欧州先進国が外貨準備の内訳として、70%前後のGoldを保有しているのに対して、ロシアや中国は思ったよりも低い事が分かる。

中国に至っては、Goldの割合はたったの2.7%と非常に低い。

 

もし今後、欧州各国のように70%前後までGoldの保有割合を高める狙いがあるとすれば、Goldの需要は今後も高まり続ける事が期待できるだろう。

 

このような政治的背景から、米国債は長期的に売られやすい傾向がある一方で、Goldは長期的見ても買われやすいという結論になる。

しかし、このシナリオ通りに世界が動いていく保証はないので、くれぐれもGoldを今から全力買いするのはお勧めしない。

知っての通り、Goldの価格はすでに歴史上最高値付近に位置している。


今の価格は割高のようにも見えるし、2023年までにはFRBによる利上げ・テーパリングが開始するだろう。

現物を購入する際は、買うタイミングが非常に重要である。その為、大きく値下がりして安くなった時には、積極的に買い仕込んでいきたいと思う。

今後のGold価格の推移が楽しみだ。

 

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