ロシア軍によるウクライナ軍事侵攻

去年からニュースで頻繁に取り上げられている、ロシアとウクライナの軍事衝突懸念。

2022年1月23日時点では、まだ戦争勃発には至っていないものの、状況は改善されないばかりか、悪化の一途を辿っている状況。

世界的に軍事大国であるロシアが軍事侵攻を開始した場合、やはり金融市場にも巨大なインパクトを与え、株価急落を引き起こしかねない。

投資家として、この地政学リスクに対する為に、最低限の知っておくべき情報だけでもおさえておこう。

なぜロシアは怒ってる?

これにはまず、ロシアの地理的な要素から見てみると分かりやすい。


ロシアは、世界軍事力ランキング2位の軍事大国であり、実戦経験も豊富である。

米国に次ぐ軍事力を有するロシアだが、地図を見て分かる通り、ロシアは巨大すぎる面積ゆえに国境を接する国が多い。

調べたところ、ロシアと国境を接する国の数は14カ国を超えているようだ。

ロシアの本音としては、隣国とはできるだけ友好関係を維持したいし、ロシアに敵意を抱く国はできる限り潰しておきたいと思うだろう。

最近はウクライナと揉めている理由としては、ウクライナがNATOに加盟をしたいとの発言を受けたからである。

NATO(北大西洋条約機構)とは、ヨーロッパと北米の30カ国による軍事同盟のことである。

もとは共産主義の脅威に対抗する為に創設されたもので、冷戦当時はソ連を仮想敵としていたと言われている。

NATOの仕組みは集団的自衛権と似ているもので、NATO加盟国が敵国から攻撃を受けた場合、NATOに加盟している全ての国が共闘して仲間を守る仕組みである。

この仕組みによって、ソ連はNATO加盟国に対して、領土を侵略する為に戦争を仕掛けずらくなり、大きな抑止力として機能している。

しかし、ここにきてウクライナもNATOに加盟をしたいと申請を出しているのだが、当然ロシアはこれに猛反発。

ロシアの隣国であるウクライナまでもがNATO加盟国として認められたら、隣国にNATO軍の戦車・最新鋭戦闘機・中短期ミサイルなどを配備する事も可能となる。

ウクライナにミサイルが配備されれば、ロシア本土にミサイルが着弾するまでに要する時間は、たったの3~5分である。

ロシアとしても、自国にミサイルの雨が降り注ぎ、またミサイルの接近に気づくときには目の前まで飛んできているというのは、やはり強い恐怖を感じてしまうのだろう。

また、ロシアは以前から南下政策を進めており、その観点からもクリミア半島をはじめとするウクライナの領海をロシアの支配下に置いておきたいという野心も少なからずある。

というのも、ロシアは世界最大の面積を持ちながら、そのほとんどが高緯度に属するため寒冷地帯であり、厳しい寒冷や多雪により農業生産がほとんどできない地域も多く、経済活動を自由に行うのが非常に難しい環境である。

凄まじい寒さにより、冬季ではほぼ全ての港湾が結氷する為、船舶の航行が不可能となる。

これにより経済活動が停滞したり、海軍による軍事展開が困難となり、軍事戦略上の弊害も大いにある。

これらの課題を抱えたロシアにとっては、冬季でも凍らない港湾の確保は重要目標の一つであり、この目標を達成する為に行われているのが南下政策である。

ロシアがウクライナ領のクリミア半島を強行的に支配下に置いた理由も、不凍港なウクライナ領の黒海にロシア海軍艦隊を軍事展開しておきたいからだ。

現時点でも、クリミア半島付近の黒海には、ロシア海軍の黒海艦隊の中枢が存在している。

これらの観点から考えても、ロシアにとってウクライナの領土・領海は手放したくない理由が多く、簡単に諦められるものではなさそうだ。

ロシアの本気度

軍事関連の資料を見ると、ロシア陸軍の兵員数は減少傾向にあり、2022年では約36万人程度と言われている。

しかも、36万人のうち実動部隊は12万人であり、残りの27万人は予備役とされている。

軍隊は民間企業と異なり利益を上げる組織ではない為、利益を生み出さない軍人へ支払う手当が国の負担となっている。

念の為に補足しておくが、利益をあげていないとはいえ、軍人は国を守るという立派な大義のもとに命をかけて働いている。

しかし、国の経済面から考えてみると、敵国に負けないように莫大な研究費や数百億円もする戦闘機などを調達し続けている訳で、軍事予算を増やせば増やすほど、その分国民へ還元できる社会保障の質が低下してしまう。

国民から徴収した血税を、どれだけ軍事予算に回すべきなのかは、賛否両論あるのでここではしないが、軍隊とは利益を生み出さず税金を大量に費やす組織であるという事実は理解しておきたい。

このような経済事情を抱えているからこそ、軍隊には常に戦闘へ参加できる現役部隊(実動部隊)と、普段は会社員などをしているが緊急時には徴兵されて戦いに行く予備役が存在している。

そうすることで、国は軍隊を維持するのにかかるコストを抑えており、これは各国どの軍隊でも共通であり、日本の自衛隊にも予備役が存在している。

 

話を元に戻すが、2022年1月時点でロシアは、ウクライナ国境付近に12万人近いロシア陸軍の実動部隊を派遣している。

この人数だけを見ると、ロシアは陸軍実動部隊のほぼ全てをウクライナ国境付近、一カ所に全集中している事が分かる。

他にも隣国はいくつかあるのだが、他所の警備が手薄になる事を承知で、ロシアはこのような対応を打ち出してきている。

この時点で、ロシア側の本気度が痛いほどに伝わってくる。

さらに、去年からロシア軍はウクライナ国境付近で繰り返し軍事演習を行っており、特殊部隊も複数加えられた前例の無いほど大規模なものとなっている。

2022年1月25日には、架橋車を大量に配備していることが報告され、これにより川などで兵士や戦闘車両が侵攻を妨げられる地点でも、比較的短時間で通行可能にできてしまうだろう。

ウクライナ側も、川や険しい道が多いからすぐに攻めに来るのは容易じゃないだろうと油断していたようだが、この報道を見て焦り始めているのではないだろうか?

そして個人的に驚いたのが、ウクライナ人は自分の子どもに銃や対戦車ミサイルを手渡し、有事の際には国を守る為、共に戦わせる家庭も増えてきているようだ。

何とも切ない話なのだが、世界の平和をどれだけ謳っても、罪のない子ども達が戦争の犠牲者になるのは結局止められないのだろうか。

これが他人事の話に聞こえる読者には今一度、日本が置かれている現状について知っておいてほしい。下記の内容を読んだら、自分も無関係でい続けられる保証がどこにも無いことを理解できるはずだ。

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次回は、ロシアとウクライナ、双方の軍事力について詳細に比較し、実際に戦争が勃発した際の金融市場に波及する影響などについても考察していきたい。

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