資本主義の限界

リーマンショック、コロナショックと経済が危機に追い込まれる度に、各国の中央銀行は量的緩和、無利子の貸付、給付金、インフラ投資などを打ち出してきた。

これまでの資本主義社会では、お金を稼ぎ続ける為に、人の役に立つ物が何なのかを必死に考えて作ってきた。

しかし、近年は政府に選ばれた会社が多くの収入を得る時代へと変わってきているように思える。

政府と繋がりの深い大企業は、政府から仕事を請け負い、多額の報酬を受け取る一方で、政府から問題視されている業種(コロナ禍では、夜の店)は給付金さえ配られないケースが相次いで報告された。

国から配られた2枚のマスクもそうだが、多くの国民はそんな物を求めていない。ちなみに、私はあのマスクを一度も使っていない。

本来であれば自由市場が資本の配分を決定するはずが、政府が勝手にそれらを決める社会主義へと近づいている。

日本経済が成長しない理由の一つが、政府が巨額の債務を積み上げ、無価値で非効率な事業の手助けをしている事である。

送られてきた2枚のマスクもそうだが、誰も大して使いもしないし求めていない物を、政府は公費によって契約会社に作らせ、誰も欲しがらない物やサービスを作り続ける企業を借金で延命させている。

なぜ、政治家はこれほど無意味なお金の使い方をしているのだろうか?

答えは単純。自分の支持率の為である。

経済危機が起こると景気は悪くなり、倒産する企業は増え、失業者も大勢出てしまう。

政府に不満を持った失業者が増えると支持率が低下し、政治家は自分の立場が危うくなるので、国民の生活を守るという大義名分の元に、これ以上の失業者増加を阻止しようと企業に多額の給付金を出し始める。

しかし、いかに景気が悪くなろうが、本当に人々から必要とされる物やサービスを提供している会社は、売り上げは多少下がったとしても倒産にまで追い込まれる事は無いはずだ。

考えても見てほしい。食べ物は毎日買いに行くし、髪が伸びたら散髪屋に行く、家電製品が壊れたら新しいのに切り替える。

本当に必要とされる企業は生き残るし、必要とされない企業は倒産する。

資本主義社会では経済を正常に循環させるうえでも、必要とされない企業は倒産させるべきである。

しかし、失業者を少しでも減らしたいという焦りから、政治家と国民は企業を倒産から救う方法を支持してきたのだ。

そのおかげで失業せずに済み、労働者の生活を守ることが出来ているのは一見すると喜ばしいものだ。

ただ問題なのが、その弊害として本来なら倒産しているはずの企業が資源を無駄に浪費し、政府の給付金により無理やり延命されたゾンビ企業が増えてきている事である。

これらの企業は生産性も高くなく、そもそも必要とされない商品を作り上げるので売り上げは伸びる事は無い。その為、政府からの継続的な資金援助が必要となる。

当然、グローバル企業と競合できるほどの力もあるはずがなく、いずれは淘汰される運命にある。

この負のループが繰り返される事で、日本企業は世界の市場でまともに戦えず、長期的に日本経済は弱体化していくのだろう。

政府による企業救済政策は、短期的に見れば労働者保護という観点において素晴らしい政策のように見えるが、長期的には日本経済全体が縮小し、グローバル競争力の大幅な低下を引き起こすことで、より酷い結果をもたらす可能性のほうが高い。

自分の支持率ばかり気にする政治家による無意味な政策が行われ、それを支持する短絡的な思考の国民達によって、日本経済は沈没していくのである。

 

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