インフレはピークアウトか?

インフレに悩まされる昨今、ついに日本の大人気寿司屋スシローが1皿100円を終了し、120円~150円へと引き上げを検討すると発表した事で、日本人も物価上昇の脅威に晒されてきている。

資産を現金のみで持っているようでは、こうしたインフレ禍では購買力が低下し、生活水準がどうしても下がってしまう。

そこで、株式やコモディティなどへと投資をすることで、資産の目減りを少しでも抑えられる。

特に2021年に入ってから、新たに投資を始める人が非常に増えてきている印象があり、コロナショック以降は右肩上がりのバブル相場だったので、YouTuberやインフルエンサーなどの発言通りに、インデックスファンドの株式を買っていくだけで、簡単に資産が増加していけたと思う。

ほとんど投資の知識が無い素人が、インフルエンサーの解説動画を聞いて、少し勉強した程度でも、いざ投資をしてみれば想像していたより簡単に稼げるじゃないかと高を括っていた途端、2022年初頭から株価は雲行きが怪しくなってきた。

もはや、これまでのような上昇一辺倒なバブル相場はとっくに終わりを告げ、2022年以降は暴落と反発が交互に入れ替わり、市場参加者を惑わす、難易度の高い相場になると筆者は考えている。

このような相場に、素人が首を突っ込んでしまうと、あっという間に資産を目減りさせ、レバレッジ取引や暗号資産などのハイリスクな取引をしていると、最悪の場合は即退場となるだろう。

つまり、私から言いたいことは一つ、この世に楽して簡単に稼げる手法など存在せず、努力なくして稼ぎ続ける事など不可能という事である。

米国のインデックス・ファンドを思考停止で買い続けておけば、いつか莫大な利益を得られる!

こういう謳い文句がやけに多くなっているが、過去何十年間にわたって上昇してきたからと言っても、未来もそうなる保証はどこにもない。

それに、米国の異常なインフレ高止まり、尋常ではない借金体質、頭の悪すぎる政策、酷すぎる経済格差問題、中国との覇権争い、このような課題は解決される見通しが立たず、米株上昇の要因であった量的緩和も、今はインフレ対応に追われており実行できない状況である。

米国は基軸通貨を発行できるという他国には無いアドバンテージを持っているから、軍事予算の増額や現金給付、株価の買い支えが出来ているものの、バブルが崩壊し米ドルの信頼が地に落ちたら、これまでのような世界に対する影響力を維持する事は不可能となるだろう。

世の中は我々が想像している以上に複雑で、状況は目まぐるしく変わっていくものである。

だからこそ、世界情勢や経済動向に常にアンテナを張り、学習し続ける姿勢が不可欠と言える。

くれぐれも、何とかインデックス・ファンドを買っとけば絶対に儲かるなどという、根拠の薄い話を妄信してはならない。

投資家の仕事は、誰よりも未来を先読みし、資産を適切な場所へと割り振る事である。

2022年、未来の株価動向を予測する上で重要となってくるのが、やはりインフレ率だろう。

なぜなら、インフレ率が高くなりすぎると、国民は生活が立ち行かなくなる為、政府は金融引き締め・金利引き上げへと舵を切る事になり、これが株価に下落圧力を生んでしまうからである。

逆に考えると、インフレ率が落ち着けば、政府も急いで金融引き締めをする必要は無くなるため、株価急落のリスクもある程度は低下すると見られている。

このことから、今後はインフレ率が株式市場の動向を左右させると考えてよいだろう。

先週、4月分の米国の消費者物価指数と、卸売物価指数が発表された。

消費者物価指数は、市場予想が8.1%に対し、結果は8.3%、前月は8.5%

卸売物価指数は、市場予想が10.7%に対し、結果は11.0%、前月は11.2%

どちらも前月より、0.2%低下しているのが分かる。これは、インフレ急上昇の勢いが、一旦は落ち着いてきたのだろうか?

これが本当なのであれば、株価にはプラスなはずである。

さっそく、S&P500のチャートを見てみよう。

反発どころか、年初来安値を明確に下抜けてしまっている。

もはや下落トレンドに入ってしまっており、どこまで下を掘るのかという議論をすべきだろうか?

インフレ率は、確かに前月よりは低かったのだが、結果が市場予想より高かった為、FRBの今のインフレ対応では遅いと危険を察知した投資家がリスク資産を売却しているようだ。

株式よりもリスク資産と言われる、暗号資産はどうだったか?

下記は、ビットコインのチャートである。

 

大幅安となり、サポートラインとして意識されていた$30,000すら割れてしまっている。

また、同時期に韓国発のLUNAトークンの価値が一夜にして99%も暴落し、ほとんど無価値に近づくという大惨事が発生した事も、BTC急落の要因と見られているようだ。

これまでのバブル相場で上昇しすぎた分を、埋め合わせするかの如く、市場は修正作業に取り掛かるのである。

株と暗号資産を見て分かった通り、インフレが高止まりすると、利上げと引き締めが強硬されやすくなり、リスク資産が一斉に売られるという構図は事実のようだ。

であれば、インフレ率が今後どのように推移していくかを考えておくことで、株価の底のタイミングをある程度推測できるはずだ。

まず、現状としてはウクライナ侵攻によるロシア制裁で、ロシアからの穀物・エネルギー輸入が途絶えている。

このことが、食料とエネルギー価格高騰が収まらない要因の一つである。

また人手不足による企業側の賃金コスト増加も、インフレ要因である。

そして住宅価格の強烈な上昇も、無視できない要素と言えるだろう。住宅ローンを左右させる長期金利は、3%前後なのに対し、住宅価格の上昇率は20%近いのである。

こんな状況では、3%の金利を支払ってローンを組み、家を購入しておけば資産価値が20%値上がりするので、ますます住宅が購入されやすい流れが出来上がってしまう。

これがインフレの根源となっている以上、より強い金利の引き上げをするしか、インフレを食い止める方法はない。

しかし、ここで問題なのが、金利上昇によって住宅価格に影響が出始めるには、少しタイムラグがあるところだ。

金利上昇は、即座に株価に反映され、株価急落を引き起こし経済を混乱させることになるが、不動産や自動車産業への影響が出るのは時間がかかる為、インフレ率が落ちてくるまでの間、どれだけ株価が下落しても中央銀行は、株価を救う手段がない。

インフレ率が下がり切っていない状況で、下手に株価救済の為に量的緩和を再開すると、再びインフレ率は高まり、米国経済は崩壊へと向かい、米ドルは紙くずになってゆくのである。(インフレは紙幣価値の棄損を意味するから)

どちらの選択を選ぶにせよ、米国経済は詰んでいる。

短期的な話をするなら、4月のインフレ率が前月と比べて下がったように、5月のインフレ率もやや下がる可能性がある。

インフレ率は前年同月比で比較される為、比較対象は2021年の5月になる。

そして、2021年3月頃に米国では3回目の一律給付金を実施したタイミングである。

4~5月頃に無から生み出された紙幣を使って、消費が活発に行われた時期である為、その当時と今月を比較すると、結果としてはそれほど物価が上昇していないように見える訳である。

その為、短期的にはインフレ率が前年同月比としては低下してくる為、インフレがピークアウトしたと考える投資家による株買いの流れが起こる可能性はあるだろう。

しかし、一律給付金による消費活発化は夏頃には効果がきれていたはずなので、前年同月比でみたインフレ率は7月からは再び高い結果になるかもしれない。

となれば、またしてもリスク資産の売り圧力が強まる事になり、株価は下落の一途を辿る事になるだろう。

なんにせよ、今後のインフレ率には非常に重要な要素となってくるので、欠かさずにチェックしておきたい。

この話は日本も例外ではなく、4月は菅前総理の携帯料金引き下げの効果が薄れた事もあってか、インフレ率1.9%を記録。

物価目標である2.0%まで、あと一歩のところまで近づいてきたが、仮に2.0%を大きく超えた上昇が推移していくと、日銀がこれまで実施してきた量的緩和政策から、ついに引き締めへと舵を切るシナリオも想定しておくべきだろう。

日本株を持っている人は、インフレ動向に意識を向けておくことを推奨する。

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