日本政府の借金はすでに1200兆円を突破し、アメリカ政府の借金は1600兆円を超えている。
もはや返せる見込みのない巨額の負債を、無から紙幣を印刷する量的緩和で解決しようとしている。
しかし、こんな魔法みたいなやり方で、この借金問題を本当に何とかできるのだろうか?
金がないなら、とりあえず紙幣を印刷する。 それが許されるなら、もう誰も働かなくてもお金が手に入る。
これで皆が幸せになれる。もう誰も働く必要もない。 しかし、世界中の誰もが薄々気づいているはずだ。
そんな甘い話など無いと。
量的緩和について再度復習しておこう。要約すると、中央銀行が市場から国債を大量に買い取る代わりに、紙幣を発行し市場に供給することで景気回復へと誘導するための金融政策である。
国債を大量に買い上げることで、国債価格は上昇する一方で、国債利回りは低下し続ける。
それにより、政府は低い金利で借金ができるので、返済負担もある程度は抑える事ができていた。
しかし、その思惑もいつまで続くかは分からない。
なぜなら、ここにきてインフレ加速による影響で、金利が上昇する可能性が高まっているからだ。
中央銀行が国債を買い上げるのは、民間銀行から引き受けるケースが多い。
国債を受け取ったら、中央銀行は各民間銀行に割り当てた当座預金の口座に、現金を振り込んでいる。
これにより、マネタリーベース(市中の総現金 + 当座預金の合計)が増加している訳である。
この増加した当座預金(準備預金)に対して、中央銀行は民間銀行へ短期金利(利子)を支払う必要がある。
今までは政策金利が低く抑えられていたので、2021/08/26 現在の日銀が支払う短期金利は0.1%で済んでいる。
その一方、アメリカではインフレが目標率2%を大きく超えて推移している。
仮に今後もインフレが加速し続けたらどうなるだろうか?
FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)は、インフレを抑制する為に、量的緩和を中止し、政策金利を引き上げるほかなくなる。
政策金利を引き上げることで、インフレは一旦落ち着くことが想定される。
しかし、金利が上がるという事は、政府がこれから発行する国債の金利も上昇する為、将来の返済負担は確実に重くなる。
それに加え、中央銀行が民間銀行の準備預金に対して支払う短期金利、この短期金利も市場の金利動向により変動する為、政策金利が上がれば中央銀行の利子負担も同時に重荷となる。
それだけじゃない。
金利が大きく上昇すれば、株式よりも国債を魅力的に感じる投資家が増える為、一時的に株式市場はクラッシュすることも考えられる。
アメリカ国民の半数は株式投資をしているとも言われており、個人の金融資産価値が大きく目減りすれば現政権への不満も高まり、支持率低下に繋がるかもしれない。
そして、株式会社は新規株を発行し資金調達をする際、株価が低迷していると不利になる。
残ったものは、政府と中央銀行の莫大な借金と、それに対する思い金利負担である。
政府が抱える莫大な借金を、無から紙幣を発行する量的緩和によって借金を無かったことにしようとしているが、その企みは盛大に失敗するシナリオが浮上している。
むしろ量的緩和によって、政府自身の首を絞めつける結末になりかねないのだ。
しかし、政府と中央銀行は決断をしなければならない。
インフレが進行し物価が極端に上昇し続けた場合は、インフレを抑制し物価を安定させる為、量的緩和を停止し株式市場をクラッシュさせるか?
それとも、株式市場のクラッシュを防ぐ為、インフレの進行には目をつぶり物価高騰を放置するのか?
株式市場の安定と、物価の安定、両方を救うことは恐らくできないだろう。どちらかが犠牲になるはずだ。
中央銀行にとっては、苦渋の決断となろう。 我々にとっても無関係ではないが、遠くから見守っておこう。
個人的に思うのが、仮に中銀が物価の安定を優先し、量的緩和を中断したことで株式市場がクラッシュしたとしても、それほど悲観する必要はないと考えている。
なぜなら、中銀は景気回復という名目に、再び量的緩和を堂々と再開する可能性が高いからだ。
このシナリオ通りにいくなら、一時的に株式市場がクラッシュするものの、量的緩和は半永久的に継続される事で株式・不動産・コモディティ、あらゆる金融商品は最終的には上昇し続けるしかないだろう。
その一方、インフレ(物価上昇と紙幣価値棄損)も制御不能となり、生活費需品は無限に値上がりし続け、貧困世帯にとっては生活が困窮することになる。
量的緩和の最悪な結末とは、富裕層は金融資産の価格上昇による恩恵を受ける事で、よりお金持ちになる一方で、物価高騰や紙幣価値棄損による影響を受けた貧困層はより貧しい生活を強いられる、絶望的な経済格差が起こる事である。
もしあなたが、貯金だけしかしていないのなら、これを機に金融資産へ投資してみてはどうだろうか?
将来の危機に備える為に・・・