米国株投資は本当に儲かるのか?

給料が伸びず、貯金も思うように貯まらない中、年金はいずれ2000万円ほど足りなくなるという脅しがニュースで報じられる日本。

もはや貯金だけでは、老後の生活が破綻しかねないことに恐怖を感じた国民は、投資に踏み切る人も結構増えた事だろう。

しかし、彼らの多くはそれほど金融リテラシーが高い訳ではなく、銀行員から進められて高い手数料の投資信託を契約させられたり、もしくはネットの記事の内容を信じて投資する人もいるのではないだろうか?

いつの時代でも、自分の頭で考え、しっかりと勉強する事が出来ない人の結末はひどいものである。

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一生懸命に稼いだ大切なお金を、なぜか投資するとなった途端、頭で考える事を放棄してしまうのである。

これでは、投資で稼ぎ続ける事などできないだろう。

初心者にありがちなのが、「投資の知識が無いなら、とりあえず米国株を買っとけば安心だ」という文言を鵜呑みにしてしまう事。

アメリカは世界一の経済大国であり、人口も増えているし、日本よりも経済成長の見込みがある。だから米国株は上昇するという理屈。

それ自体は間違っていないし、私も実際に米国株を保有している。

しかし、投資というのは良い事ばかりではない。魅力溢れる米国株投資には大きなリスクがある事も知っておいたほうがいい。

 

アメリカには1600兆円以上の借金がある事をご存じだろうか? この金額は、日本の借金1200兆円を上回る。

ベトナム戦争以降、アメリカはこの借金体質が根強く残り、ピンチに追い込まれる度に量的金融緩和を行い、危機を乗り越えようとしてきた。

コロナショック時も同様であり、大規模な量的緩和を推し進め、失業者に対しては失業給付金を上乗せして大振る舞いをしている。

なんと、失業者は月に40万円~50万円もの大金を受け取る人もいて、もはや働いていた時よりも収入が多くなっている状況。

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これにより、アメリカでは人手不足が深刻化しており、賃金を上げてでも人材確保に躍起になっている企業が増えている。

働いたら負けという異常な状況が続く限り、浪費を繰り返す国民によって物価は上昇していくだろう。

 

2021/08/29現在では、インフラ法案として390兆円規模の財政支出を検討しているとの事。

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これだけのお金を、どのように集めるのだろうか? 今のアメリカ国民に多額の税金を支払える余裕はない。

であれば、その資金も無から紙幣を発行し、将来の世代に借金のツケを回すことで調達するのだろう。

 

このように、アメリカは後先考えずに大規模な量的緩和や給付金を打ち出してきた為、将来に返済すべき負債が膨らむ一方である。

多くの負債は利子が付くタイプであり、金利変動型のものであれば、少しでも返済負担を軽くするために低金利を維持しておきたいというのがアメリカ政府の本音だろう。

 

金利を下げるには、今後も国債を買い入れを継続する必要があり、これは結果的にドル安に繋がりやすい。

またアメリカは、貿易赤字も国の重大な課題として残っており、コロナショック以降の赤字幅は拡大する一方である。

 

2020年の米貿易赤字は2008年以来の高水準に


この原因の一つが、国民一律給付金や失業給付金による国民の臨時収入増加である。

特に失業者は働かなくても、働いて稼いでいた金額以上の給付金を受け取っているので、Amazonなどネットショッピングでの注文量が増加していたようだ。

その証拠に、Amazonはコロナ禍でも売り上げが伸び続け、株価は過去最高値を更新している。


アメリカの失業者は、働かないので生産活動は低下する一方で、Amazonで他国の企業の商品を注文する。

ここで言う他国とは、もちろん中国も含んでいる。中国は世界的に見てもコロナの影響がマシなほうで、経済活動は既に復活しており、アメリカがたくさん物を買ってくれるので好景気になっている。

アメリカと中国の、経済の温度差がよく分かるだろう。

これこそ、アメリカの貿易赤字の原因である。アメリカは中国に米ドルを支払い商品を買い取り続ける為、中国はどんどん儲かる一方、アメリカは米ドル資産が次々と海外に流出している状況。

元はと言えば、アメリカ政府が国民に対して多額の給付金をバラまいたのが原因であろう。

政治家は自分の支持率を維持する事で頭がいっぱいの為、アメリカの将来のリスクは考えずに、今さえ良ければそれで良いと考えている。

貿易赤字が拡大する以上、米ドルの売り圧力が高まり続けるので、結果的にドル安へと誘導されやすい。

なぜ貿易赤字になったら、ドル安になるのかを説明しておこう。

例えば、日本の車をアメリカ国民が米ドルで支払い購入すると、日本の企業は受け取った米ドルを売り、日本円を買うからだ。

日本企業は日本の従業員に米ドルで給与を支払えないので、どこかのタイミングで必ず日本円に変換する必要がある。

つまり、アメリカは日本との貿易で赤字(日本側が貿易黒字)が続くと、米ドルが売られ続けるので、ドル安となりやすい。

これらの観点からも、米ドルは他国の通貨と比較した際の相対的価値は低下し続けるシナリオが濃厚だ。

下記に、ドルインデックスのチャートを示しておく。


ドルインデックスとは、ドル指数とも呼ばれ、米ドルの価値が他の主要通貨(日本円、ユーロ、ポンド、フランなど)と比較して強さを測る指数である。

ドルインデックスが上昇すれば、他国の通貨より米ドルの価値が高い事を示す。上記のチャートでは、レンジ圏内ではあるが、高値を切り下げている為、長期的には下落トレンドに入る可能性も高いと言える。

 

ここでようやく本題に入るのだが、長期的にドル安トレンドが継続する場合、米国株投資は必ずしも当初想定していたほどのリターンは得られない事が考えられる。

米国株を買う際は、現地の通貨である米ドルでしか買えない。つまり日本円を一旦米ドルに変換してから、米ドルを支払い米国株を購入している訳である。

この面倒な作業は、裏で証券会社が代わりに行ってくれているので気づいていない人も多いが、海外株の投資ではこのように、為替の影響を大きく受けているのである。

外貨建て資産を保有する場合は、為替レートの変動により外貨建て資産価格を円換算した際の価格も変動してしまう。

もっと分かりやすく説明すると、Amazonの株を保有していると仮定し、株価は昨日と今日で全く変動無しだとする。

であれば、自分の資産価格も昨日と変わらないはずだが、もし米ドル円相場が大きく下落し、昨日よりドル安になっていた場合は、ドル建て資産価格を円換算した際の価格は低下している。

つまり、株価は変わらなくても(上昇していても)、すごい勢いでドル安になっていれば、円換算した時の資産価格は大きく目減りしてしまう訳である。

これを、為替変動リスクと呼ぶのだが、このことまで考えている投資家は少ないように感じる。

ただ米国株に長期投資していれば、長い目で見れば必ず儲かるという文言をよく見かけるが、実際はどうだろうか?

私には、そんな都合よく利益が得られるとは思えないのだが・・・

 

日本経済は今後ますます低迷し、日本株はオワコンなどと揶揄されているが、長期的に円高が進むのであれば、為替の影響を受けて、日本株が全面高になる可能性も十分にある。

このように、投資をする際はあらゆる可能性がある事を把握し、「〇〇を買えば問題なし!」という発言はまやかしであると、見抜ける投資家にならなければ最終的には大損する事になるだろう。

 

この話を聞いて、だったら米国株よりも日本株をたくさん買おうと思ったのなら、あなたは何も学べていない・・・

ドル安・円高が想定以上に進行した場合、今度は逆に円高のせいで日本の商品が海外に売れなくなる。

日本は輸出企業が多いと言われる為、大本の親会社(TOYOTAなど)の売り上げが低迷し出すと、親会社から注文を受けて成立している子会社の売り上げも連鎖的に低迷して、一気に日本は不景気になっていく。

そうなれば、日本株は下落圧力が強まるので、日経225を中心とした日本株は軒並み下落していくシナリオも考えられる。

 

何か一つのシナリオや考えに囚われず、あらゆるシナリオを想定した上で、最終的な決断を下すことが重要だ。

私があなたに一番お勧めするのは、分散投資だ。

2か国だけでなく、世界中に幅広く投資し、また株だけでなく他の金融商品(債券・不動産・コモディティ)にも投資する事で、リスクを大幅に分散させることが出来るはずだ。

ぜひ、今回学んだ内容を、今後の投資戦略の役に立てていただければ幸いです。

 

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