インデックス・ファンドに潜む懸念

素人投資家に人気なインデックス・ファンド。これを長期的に積み立て投資しておけば、高確率で利益が得られると言われている。

インデックスとは、株式市場全体の平均を示す指数。インデックスと連動した値動きを目指して運用される投資信託をインデックス・ファンドと言い、様々な指数(インデックス)に連動した金融商品が存在している。

インデックスとは対照的なものに、アクティブ・ファンドが存在する。

アクティブ・ファンドとは、プロの運用担当者が投資先を自由に決定し、指数の平均パフォーマンスを上回る事を目標にしている金融商品のことである。

よく世間では、インデックスとアクティブ、どちらが良いのか議論されてきたが、ここ数十年では実績的にはインデックスに軍配が上がる。

しかし、これまで素晴らしいリターンを生み出し続けてきたインデックス・ファンドにも注意すべき点がある。

結局のところ、インデックス・ファンドのパフォーマンスは、その構成企業群の株価推移で決まるという点である。

つまり、構成企業群の価値が今後も増大する見込みがあるかどうかを見極めなければ、例えインデックス・ファンドという名前で運用されていても今後も高パフォーマンスを維持できるか分からないのだ。

企業価値が低い企業が、構成銘柄に多く含まれていると、やはり思っていたほどのリターンは得られなくなる恐れがある。

企業価値とは、その企業が長期にわたって稼ぐ利益の現在価値を指す。

つまり、長期的に株価が上昇する企業とは、長期的に企業価値が高まる企業のことであり、その企業に競争優位性や高い成長力が備わっていなければならない。

インデックス・ファンドは数百社から数千社という幅広い企業に分散投資できるのがメリットだと謳われているが、果たしてそれらの企業のうち何%が高い企業価値を有しているのだろうか?

例えどれだけ企業価値が高い企業が含まれていようと、価値の低い企業が大量に紛れ込んでいる場合は全体の足を引っ張ることになり、インデックス価格全体のパフォーマンスは伸びにくいだろう。

また、インデックス・ファンドには、指数に採用さえされれば、あとはファンドを通じて大量の資金が流れ込んでくる構図も問題だ。

例えば、日本の有名な株価指数にTOPIXがあるが、東証一部に上場が決まった全ての企業が自動的に指数に組み込まれる仕組み自体、あまり好ましいとは言えないだろう。

日経225も同様で、TOPIXよりは信頼性が高い企業が多いのは事実だが、それでも時価総額が大きい順にランキング形式で抽出しただけの指数は、本当に長期投資という観点から考えて、適切だと言えるのだろうか?

短期的に業績が悪化している場合でも、日経225に選ばれた時点で、国内外から大量の資金がインデックスを通じて入り続けてくる。

そうなると、株価は業績に関わらず右肩上がりをしていくが、これらは株式市場に歪みをつくってしまう原因となる。

当然、この実体とはかけ離れた見せかけの株高はいつまでも続かず、どこかのタイミングで歪みを治しに下落してくるだろう。

それに加えて、今では機関投資家の7~8割はインデックス運用を主体としており、資金が安定供給される企業は次第に、株主に対する意識が薄れてゆく。

これらの観点からも、東証一部に上場している全ての企業を自動的に指数に組み入れているTOPIXは、長期投資の対象としては適切でないと結論づける。

また日経225も同様に、TOPIXよりは多少マシな企業が多いが、企業の将来性を慎重に吟味されて選別された訳ではないので、こちらも長期投資には微妙である。

先進国での人口減少、経済大国である中国での少子高齢化問題、米中貿易戦争による経済不安、気候変動による世界各地での自然災害多発、経済格差深刻化による治安悪化、第3次世界大戦勃発のリスクなど、今後の世界経済が成長していく上で大きな障壁となるリスクが大量に潜んでいる事を忘れてはならない。

さすがに世界戦争は起きないと思うが、中国の台湾進攻問題は米国との軍事衝突の引き金になりかねない。

インデックス・ファンドへの長期積み立て投資は、これからも世界経済が長期的に成長するという願望のもとに行っているはず。

しかし、世界経済がこれからも発展していく保証はどこにも無い。何が起こるか分からないからこそ、インデックス運用による分散が重要だと言いたいのかもしれないが、一度世界経済が悪化したなら、ほぼ全ての株価は暴落する。

コロナショックを見ていれば分かる通り、分散投資をしていても全ての株が暴落したので、分散の意味がなかった。

もしかすると、インデックス運用主流の時代が終わり、今度はアクティブ運用が主流となる時代に切り替わるかもしれない。

本当に企業価値が高い企業のみを厳選し、それらの企業に集中して投資するほうが利益もより増大していくのではないだろうか?

なぜなら、本当に企業価値が高い企業は、景気がどんなに悪くなろうが関係なく、人々が本当に必要としている商品やサービスを提供しているので、利益を安定的に出し続ける事が可能だからだ。

インデックス運用の場合は、企業価値が低い企業も大量に紛れ込んでいるので、景気が悪化し続ければ、大企業であっても倒産する企業が増えていくだろう。そうなれば、インデックス指数も連動して下落するはず。

これはあくまで世界経済が想定以上に悪くなったケースの話ではあるが、今一度、インデックス運用が本当に長期投資に向いているかどうかを考え直しておく価値は十分にあるだろう。

ちなみに余談だが、米国にもインデックス指数は複数存在しており、そのうちのS&P500という指数はパフォーマンスが非常に高い。

実際に、S&P500指数の価格推移を掲載しておく。


S&P500指数は、米国の株式市場(NY市場とNASDAQ)からプロ達が定期的に議論して選び抜いたエリート企業500社を対象としている。

世界で最高クラスと呼ばれるほど審査が厳しく、よほど将来性に期待されていなければ選ばれる事は無い。

つまり、S&P500に選ばれている企業はどれも企業価値が高いものであり、長期投資に向いていると判断できる。

私自身、このS&P500指数に連動したETFを好んで定期購入しており、利益もどんどん増え続けている。

しかし、S&P500の構成銘柄の内、GAFAMが占める割合は25%を超えており、500社のうちのたった5社が全体の3割近くを占めているのはいかがなものか?

GAFAMを筆頭とするハイテク業界が打撃を受ければ、S&P500指数全体が暴落するのは避けられないだろう。

それに直近では、韓国がApple社に対して反トラスト法を適用し始め、また米国議会ではGAFAのあまりにも巨大な収益力に恐れをなし、GAFA解体論を検討している。

このようなリスクがあると知っても、本当にインデックス運用が安泰だと思えるだろうか?

投資とは本来、将来性のある対象を安く購入して、高くなったら売り抜けるのが鉄則のはずである。

分散という言葉に惑わされ、構成銘柄の事についてよく知りもしないで、毎月積み立てていけば長期的には儲かると信じていないだろうか?

本当にそうだろうか? 投資はそんなに甘い世界ではなく、弱肉強食な世界である。

自分の頭でしっかりと考え、本質を見抜こうとしない人間は、いつの時代でも最終的には敗北するのである。

 

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