東京証券市場全体が、数十年ぶりに大改革されようとしているので解説したいと思う。
まず大改革に至ったのには、日本の歪んだ株価指数を解決する為である。
日本の株価指数TOPIXは、東証一部に上場している企業が全て選ばれる仕組みなので、日本国内トップ市場と称えられる東証一部上場企業の中で実力差が開きすぎている。
例えば、東証一部の時価総額ランキングトップのトヨタは年間利益2兆円を超えているのに対し、最下位層は年間数億円だったり、倒産間近の企業も存在している。
一度、東証一部に上場さえしていれば、よほど業績が悪化しない限り降格される事も無いので、大して実力がない企業が多く居座り続けているのだ。
その為、実力がない企業群が足を引っ張るせいで、TOPIX株価全体に悪影響を与えている事が問題視されてきたのだ。
実際に、TOPIX指数価格はバブル崩壊後、いまだに最高値を更新出来ていない。
TOPIXは、全ての東証一部上場企業を対象とする株価指数で、東証一部は日本で最上位ランクの株式市場である。
つまり、TOPIX価格が低迷しているという事は、日本経済全体がここ数十年間、ずっと成長しなかったという証拠である。
コロナショック以降、狂気的な量的緩和のおかげで、株価は短期的には上昇しているが、緩和が終われば株価も終わるだろう。
これらの背景から、政府は東証市場全体の再編を決定し、一気に日本の株式市場は新しく切り替わると言う訳だ。
このように、来年以降はプライム市場・スタンダード市場・グロース市場の3区分に分けられるようだ。
恐らく、「 東証一部上場がプライム市場 」「 東証二部がスタンダード市場 」「 マザーズ市場とJASDAQ市場はグロース市場 」という区分けになるのではないだろうか?
そして最も気になるであろう。プライム市場に上場できる条件は下記の通り。
市場区分見直しの概要 より引用
着目すべき点は、上場維持基準の流通株式時価総額 100億円 という項目だろう。
今回新たに、「国内の普通銀行、保険会社、事業法人等が所有する株式、その他取引所が固定的と認める株式」が流通株式数の計算式に加えられたことで、より流動性の確保が必須となっている。
これまでは、企業間によるお互いの株式の持ち合いが行われてきた株に対しては保有割合が全体の10%未満であれば、流通株式として計算されていたが、来年からはそれらの株式は日流通株式として見なされる。
一般的に、多くの大企業は競合他社との間で株式の持ち合いを行っている為、新規ルールに適応するには保有している株式の売却を検討し始める必要が出てきた。
それに、時価総額100億円という条件もクリアしなければならない。
現時点で、これらの条件に満たしていない東証一部上場企業は、600社程度に及ぶと言われている。
つまり、2200社近くある一部上場企業から、600社が脱落するのであれば、TOPIX指数価格にも多大な影響が出るものと思われる。
その為、TOPIXに連動した投資信託を買っている場合は、短期的には下落する動きが出てくることは念頭に置いておこう。
とはいえ、すぐにTOPIX指数が消滅する訳ではないようで、段階的に新しい指数へと移行する計画が予定されている。
また残念な話だが、東証再編により株主優待を廃止する企業が増加するとの見方も出てきている。
以前までの一部上場ルールとして、株主数2200人以上という条件を満たす必要があったので、優待を打ち出す事で投資家増加を図っていた。
しかし、今回の上場ルールでは株主数800人で問題ないようなので、無理して株主優待を実施する必要性も無くなってくる可能性はある。
それに、株主優待は日本国内在住の投資家だけが対象であるケースが多く、海外の投資家からは不平等だと批判に晒されてきた経緯もある。
優待目的で個別株に投資している人は、自分の投資先企業が優待廃止を発表していないかを、こまめにチェックする事を推奨する。
<今後の日程>
- 2022年1月11日:新市場区分の情報を、東証がウェブサイトで公表予定
- 2022年4月4日:新市場へ移行開始
来年は、日本株市場全体が一時的に混乱する可能性が高く、一部上場企業から降格が決定された企業の株価は暴落するだろう。
そこをあえてチャンスと捉えて買いに向かうのも面白いかもしれない。もちろん、銘柄選定は必須だが。