インフレの加速を抑える為、FRBは2022年から利上げとQTに踏み切ると宣言した。
コロナショック以降、右肩上がりを続けていた株式市場や暗号資産市場に動揺が広がり、リスク回避の動きが確認されるようになった。
仮にバブルが崩壊し、ここから大暴落が発生する可能性が高いのであれば、あらかじめクラッシュに備えたポートフォリオを構築しておくほうが安心できるだろう。
そこで今回は、具体的にどのような銘柄を取引すべきかを考えていきたい。
下落相場の銘柄
まずは、2022年2月13日時点のS&P500チャートを見てみよう。
2020年3月から大規模な量的緩和が開始され、S&P500は最高値更新に成功した。
しかし、2022年に入ってから12%を超える下落調整が入り、この付近が天井である可能性に怯えている投資家も多いだろう。
直近では、下落調整を付けたポイントから半値近くまで反発してきているので、地合いとしてはまだ悪くはないと言える。
次に、米国を代表する2000の小型銘柄で構成される、ラッセル2000について見てみる。
こちらはS&P500よりも危うい状況で、高値から22%を超える急落が発生しており、直近サポートラインを明確に割れている。
ラッセル2000は、S&P500よりも米国の経済状況をより広範囲に示してくれる指数の為、上記のチャートを見る限りだと、警戒を強めざるを得ないだろう。
また、小型銘柄で構成されるラッセル2000は、S&P500の先行指標として機能するケースがある為、今後も要注目としておこう。
次に、インフレが全く加速する気配のない、我が国 日本の株価(日経225)を見てみよう。
日経平均株価も高値から15%近い下落調整を着けており、去年の株価よりも下回って推移している。
ラッセル2000と同様、こちらもサポートラインを割り込んでしまっており、強気相場の勢いが欠けているのが分かる。
次は、ハイ・イールド債(ジャンク債)のチャートを確認してみる。
こちらは、短期間で6%を超える急落が起こっており、既に直近のサポートラインを明確に超えている。
次の強いサポートラインまで距離がある事に加え、直近の株価はそれなりの反発を見せているのに、ハイ・イールド債は上がる気配を感じさせない。
個人的には、このチャートに強い恐怖を感じており、ハイ・イールド債は「炭鉱のカナリア」とも呼ばれる先行指標でもあるので、このまま急落し続けるようなら注意が必要だ。
最後に、超ハイリスクな暗号資産を見ておこう。ここでは暗号資産市場で時価総額トップのビットコインチャートを参考にする。
なんと、最高値から50%以上の大暴落が発生している。さすがは、ビットコイン。
このまま$100,000まで上昇すると期待して、$60,000以上で購入した投資家は心底後悔しているだろう。
BTCが暴落した理由は、利上げ懸念と株価下落につられて下がった事が大きい。
ビットコインは本来、株価とは相関関係が無く、デジタルゴールド的な立ち位置を取ってきた。
しかし現在では、プロの機関投資家が暗号資産市場に参入してきた事で、市場構造は大きく変わってきている。
というのも、機関投資家は株式と暗号資産の両方を保有しているので、株価が下落した場合は、損失を補填する為に暗号資産も売却する傾向があるからだ。
株価が大暴落した際は、暗号資産もさらなる下落が起こる事は覚悟しておくべきだろう。
また、BTCは株価下落の先行指標になるケースもある為、BTCを保有していない投資家も、BTCの価格チェックは欠かさないでおこう。
上昇相場の銘柄
ここまでは下落相場に転じた銘柄を紹介してきたが、反対に上昇相場に転じた銘柄もあるので確認してみよう。
まずは、貴金属関連について。特に、GOLDは底堅く推移している。
日足チャートを見てみると、直近では株価が値下がりしているのに対して、GOLD価格は順調に上がっているのが分かる。
GOLDは配当・金利を生まない為、利上げされるとGOLDには逆風となりやすいのだが、今のところは問題なさそうだ。
その理由として考えられるのが、インフレ加速懸念である。
現時点で、米国のインフレ率は7.5%を超えており、この上昇率は40年ぶりの水準とされている。
FRBのパルエル議長は、これまで何度もインフレは一時的だと発言してきた為、インフレ抑制に舵を切るのが遅くなりすぎてしまったのである。
2022年3月のFOMCでようやく利上げが開始される事が決まったのだが、想定される利上げ幅は、たったの0.25%である。
さすがにインフレ率7.5%という数字が発表された今、利上げ幅が0.25%から0.5%に引き上げられる可能性も高まっていはいるものの、それでもインフレ率7.5%には遠く及ばない。
また、急激に利上げ強化へと舵を切ることで、市場が動揺しクラッシュを引き起こす危険性もあるだろう。
パルエル議長としても、できる限りクラッシュを引き起こしたくはないだろうし、その責任を追及されたくはないだろう。
という事は、インフレ率がこのまま加速しても、強気で利上げに踏み込むことができず、インフレ率10%を超えるシナリオもあるのかもしれない。
インフレが進むという事は、現金の相対的価値が低くなり購買力が下がるので、インフレ対策としてGOLDを買っておこうと考える投資家は一定数いる訳である。
ゴールドと似たような性質を持つビットコインが、全く異なる値動きをしている点を考慮しても、やはりデジタルゴールドとしての地位を明確に確立できていない証拠でもあるだろう。
今後もインフレ率が加速するようであれば、短期的にGOLDのETFを購入したり、CFDでロングポジションを持つのもアリかもしれない。
次に、農業商品先物チャートを見てみよう。
世界人口が右肩上がりになるにつれて、必然的に食料需給は高まっていくので、農業商品も買われやすい。
そして、最近の世界情勢としては、ロシアとウクライナの軍事衝突懸念がある。
ウクライナは昔から、欧州のパンかごと呼ばれるほど農業生産が活発的で、今では世界の食糧庫とも表現されるほど。
そんなウクライナがロシアの手に落ちてしまえば、欧州やアフリカは食料輸入に大きな悪影響が出かねない。
経済状況が悪かろうと、世界戦争が勃発しようと、農作物生産量が減少しようと、人々は食事をしないと生きられない。
地球温暖化の影響なのか、世界では気候変動問題に直面し、山火事や水害、そして農業に欠かせない地下水の枯渇など、農作物の生産量が減少する懸念事項が続出してきている。
このことから、農業関連の銘柄への投資は、長期的に見ても検討に値するのではないだろうか?
そして、ウクライナ・ロシア問題に関連する事項として、エネルギーが投資候補として挙がってくる。
現在の、原油先物価格のチャートはこちら。
全く、上昇に歯止めがかからない状況である。このまま$100を超えていく可能性は極めて高い。
エネルギーに関する話は、これまで何度も説明したので、ここでは省く。
注目すべき点として、ロシアがウクライナに軍事侵攻した場合は経済制裁として、ロシアからドイツに天然ガスを送るパイプライン、ノルドストリーム2を稼働停止すると発表していること。
これにより、ロシアはエネルギー資源を売って外貨を稼ぐ事が難しくなる訳だが、一方でドイツは天然ガスを輸入できなくなる。
これはいわゆる諸刃の剣であり、欧州とロシア双方が消耗戦に突入すると思われる。
また、エネルギー資源の輸入が難しくなるなら、当然のようにエネルギー価格は急上昇する事になり、これは日本にとっても輸入コスト上昇により経済的打撃を受ける事になる。
しばらくは、原油先物やETFを購入してみるのもアリだろう。
最後に、米国債のチャートを見ておこう。
2022年に入ってからは、利上げ懸念から大きく売られているのが分かる。
一般的に株価が下がると、安全資産である国債が買われる傾向があるものの、QE停止からQTと利上げ開始の影響から、債券価格はまだまだ下がる可能性が高いと見ている。
その為、ハイ・イールド債を中心に、債券の空売り(ショート)を検討してみようかと考えている。
今回は、リーマンショック級の相場クラッシュに備えたポートフォリオについて考察してみた。
少なくとも、株式を積極的に購入していけるフェーズではなさそうに思うので、個人的にはインフレ加速を意識したコモディティをメインに購入していき、リスク資産である株や暗号資産の空売りを継続する予定である。
ここまでの内容を読んでくださった読者には、くれぐれも大暴落に巻き込まれない事を祈っている。。