今回からは、エリオット波動論の各波の特徴について解説していく。
一度にすべてを解説すると混乱しやすいので、一記事につき1つの波とする。
なお、エリオット波動論の解説をする上で、主に上昇トレンド時を例に挙げていくが、下降トレンドの場合でも理屈は全く同じである。
下降トレンド相場を分析する際は、上昇トレンドでの解説をそのまま活用し、進む方向を下向きに考えて、実際のチャートに当てはめてほしい。
この記事では、まず一番最初の推進1波の特徴について解説する。
推進1波の特徴
推進1波目は、そこまで強い上昇になる事は少なく、よっくりとジリジリ上げてくる動きとなりやすい。
これまで下落が続いてきた相場で、一部の投資家が買い時と判断した事で、上昇反発するようなイメージである。
しかし、今まで下落が続いてきた事を考えれば、やはり「まだ下がり続けるかも」と恐怖を感じてしまうものだろう。
その為、推進1波が強烈な勢いで上昇してくる展開は、あまり考えられない。
これはダウ理論の、「主要なトレンドは3段階ある」の先行期と似ている。
これまで価格が下落してきたものの、ネガティブニュースを価格が全て織り込み、これ以上下がりようがないと判断した一部の投資家が、徐々に買い仕込み始めるフェーズ。
しかし、これまで価格が下がり続けてきた事を考えれば、下落トレンドが継続する可能性もある為、先行期で買い仕込んだ投資家は、暴落を恐れてすぐに売り抜けてしまう。
これにより、先行期の上昇幅は比較的小さく、そしてすぐに下落に転じる傾向がある。
この観点からも、エリオット波動論はダウ理論と相性が良いので、この2つの理論を組み合わせて考えていくと理解が深まるだろう。
推進1波の見抜き方
まず初めに、推進1波を見抜くのはプロでも困難とだけ言っておこう。
なぜなら、推進1波に見える上昇波動が、下落トレンドに対する浅い調整の可能性があるからだ。
赤い四角で囲った調整ABC波動を、誤って推進1波と勘違いしてしまい、ここから上昇を見込んで買い注文を出すと、とんでもない損失を被る事になる。
私自身、「ここが1波になるはず!」と予測して、何度間違えたことか・・・
その為、リスクが高い推進1波は、最初から手を出さずに静観しておくのが基本である。
相場は、待っていればいくらでも稼げるチャンスがある。
だからこそ、自分が得意なチャートパターンが出現するまで待っていればいい。
とはいえ、早めに1波を見抜けるようになれば、気づいていない投資家よりも有利になるのは確かだろう。
その為、1波に出現しやすい基本的な波形パターンについて解説しておこう。
先ほど、推進1波が出現する前は、下落トレンドが続いているケースが多いと話していた。
下落トレンドから上昇トレンドに転換したと判断するには、どのような条件が必須だろうか?
これについても、ダウ理論の「トレンドは転換サインが出るまで継続」が参考になる。
これまでの下降トレンドが崩壊したと判断するには、直近の戻り高値を実体ベースで明確に上抜けた時である。
このように、直近の戻り高値を明確に突破してきた場合は、推進1波となる可能性があるので、詳しく分析していこう。
1波目の内部波動を、短い時間足に切り替えてみると、5波動で構成されている。
その5波動構成は、ダイアゴナルトライアングルと呼ばれるパターンを形成しやすい。
ダイアゴナルトライアングルとは、2つの条件を満たしたチャートパターンである。
- 1波と4波が重複している
- 上側と下側を引いたラインが収束している
そして、このダイアゴナルトライアングルは、2種類ある。
- リーディング・ダイアゴナル:継続サイン、1波とA波に出現しやすい
- エンディング・ダイアゴナル:反転サイン、5波とC波に出現しやすい
この2つの見分け方は、波動の副次波をカウントすると判別できる。
リーディング・ダイアゴナルの副次波は、「 5 – 3 – 5 – 3 – 5 」で構成される。
エンディング・ダイアゴナルの副次波は、「 3 – 3 – 3 – 3 – 3 」で構成される。
1波に出現しやすい、リーディング・ダイアゴナルのイメージが、下記の図だ。
このようなパターンが底値圏で出現した場合は、それが推進1波となり、上昇トレンドが始まる可能性が高まると覚えておこう。
上昇反発が、推進1波である可能性が高い条件をまとめると、
- 直近の戻り高値を明確に突破していること
- 上昇反発した波動の、内部波動が5波動構成であること
- 5波動構成の形が、リーディング・ダイアゴナルのパターンであること
これら3つの条件を全て満たした、上昇反発が起こった場合、それは推進1波である可能性が高いだろう。
hiroの見解
今回は、エリオット波動論の推進1波について解説してきた。
全ての始まりは、推進1波からなので、まずは1波を見抜く練習をしていこう。
とはいえ、1波を認識するのは容易ではない為、無理して取引する必要は全くない。
自分が得意とするチャートパターンが出現するまで、待つというのも立派な戦略である。
多くの素人は、この「待つ」ことが出来ない為、頻繁に取引してしまい、損失を連発してしまう傾向があるようだ。
これがいわゆる、ポジポジ病なのだろう。
しかし、これまで学んできた内容を振り返れば、わざわざ1波目を狙った取引をするメリットなど、ほとんど無い事に気づいたはずだ。
次回は、1波目の次に出現する2波目の特徴について解説していくので、今回学んだ内容をしっかりと覚えておこう。
まとめ
- 1波目は、そこまで強い上昇にはならず、ジリ上げになりやすい
- 1波目の見極めは、プロでも困難なので、無理に取引しない
- 直近の戻り高値を明確に突破したら、推進1波を形成している可能性がある
- 1波の内部波動は5波動で構成されている
- 1波の5波動構成は、リーディング・ダイアゴナルとなりやすい
- 5波動の副次波は、「 5 – 3 – 5 – 3 – 5 」で構成されている