エリオット波動論とは?

テクニカル分析の中でも、かなり有名なエリオット波動論について知っているだろうか?

 

この理論は、ダウ理論やワイコフ理論と並ぶほど、世界的に評価されている。

エリオット波動論を理解すれば、相場の先行きがイメージしやすくなり、あらかじめ複数のシナリオを立てる事ができるようになる。

 

プロの投資家でさえ、不透明な相場の先行きを完全に予測するのは不可能だ。

だからこそ、考えられる限りのシナリオを事前に想定する力を身に着ける重要性は高い。

 

この記事では、エリオット波動論の概要について解説していく。

エリオット波動論は、詳細に解説すると長くなる為、複数の記事に分けて掲載する。

エリオット波動論とは?

ラルフ・ネルソン・エリオット氏により考案された理論であり、相場は一定のサイクルに基づき変動していると提唱した。

チャートは一見すると、下図のように、ランダムに動いているように感じるだろう。

しかし、実際はランダムではなく、相場はある一定のリズムで動いているようだ。

 

これは、とても興味深いだろう。

この世界の出来事、そしてチャートの値動きは、全て法則に基づくものであり、最初から決まっていたという解釈の仕方もできる。

やはり、この世界は偶然ではなく、何かしらの意思や、プログラムによって創造されているのだろうか?(笑)

話がずれたので、元に戻そう。

 

つまり、エリオット波動論によると、相場にはサイクルがあり、値動きは一定のリズムに従って動いているという事だ。


この法則性を理解しておけば、次の値動きがイメージしやすいので、将来価格分析において、非常に役に立つ。

エリオット波動論の基礎

1. 相場は8つの基本リズムで構成

エリオット波動論では、値動きを波と捉えて、波形パターンによる分析を行っていく。

先ほど、値動きは一定のリズムで動いていくものだと解説したが、どういう風に動いているのかを具体的に見ていこう。

 

例えば、上昇トレンドと聞くと、一直線に突き進んでいくイメージがあるだろう。

しかし、こういった一直線に上昇し続ける相場も、下がり続ける相場も、基本的には存在しない。

(ただし、スイスフランショックや、国・企業の財政破綻などの事例を除く。)

 

上昇する際はこまめに下落調整を挟みながら、下落する際は上昇反発を挟みながら、進んでいくものだ。

その理由は至って単純で、買った人は価格が上昇すれば利確売りをするし、まだ買ってない人は価格が下がれば買い始めるからだ。

 

その為、実際の相場の値動きは、下図のようになると考えられる。

このように、上昇・下降トレンドにおいても、推進派と調整波が交互に出現しながら進んでいく。


そして、ラルフ・ネルソン・エリオット氏は、相場には下記の法則性がある事に気が付いた。

相場は「推進5波動、修正3波動」で構成されている


実際のイメージ図を見てみよう。

一見ランダムに動いているように見える相場は、推進5波動・調整3波動、全部で8つの基本リズムを1つの周期として、この周期を繰り返し続けているようだ。


各波動には、それぞれ特徴があり、その特徴をトレードの判断材料に活用させれば、勝率が飛躍的に高まるだろう。

次回以降の記事では、この各波動の特徴について解説していく。

2. 相場はフラクタル構造

図形の一部を拡大して見ると全体図と似ている構造であり、いくら細部を拡大しても複雑さを保っている形状をフラクタルと言う。

 

フラクタルな図形は測れば測るほど微細な凹凸が確認される為、その図形の輪郭の長さは無限である。

自然界の稲妻や雪の結晶などにも確認されている。

このように、自然界にはフラクタルで構成されているものは意外と多い。

 

自然界が、不思議な法則性に基づいて構成されているのなら、相場にも同じようなフラクタル構造があるのではと、エリオット氏は考え、調査した。



その結果、長期時間足・中期時間足・短期時間足、このいずれにも同じような8つの基本リズムが確認されたのだ。

 

つまり、一つの推進波を短期時間足に切り替えると、推進5波動構成である事が判明した。

また、一つの調整波を短期時間足に切り替えると、調整3波動構成である事が判明した。

上図を見れば、長期時間足を短期時間足に切り替えてみると、同じような波動で構成されているのが分かるだろう。

この短期時間足の内部波動のことを、副次波と呼ぶ。

フラクタル構造の為、この副次波をさらに短い時間足に切り替えると、より細かい副次波が確認されるはずだ。

 

これらの観点からも、エリオット波動論は一つだけの時間足に使うのではなく、長期・中期・短期の複数の時間足を対象とする事で、長期的な方向性だけでなく短期的な値動きも予測しやすくなる。

 

3. エリオット波動論の3原則

実際に自分で、エリオットカウントをチャート上に表示させようとすると、どこからラインを引けばよいか分からない。

その為、自分が引いたエリオットカウントが正しいかどうかを確認しなければならない。

エリオット波動論には、3つの条件を満たす必要がある。

  1. 推進3波の長さが、推進波の中で最も短くなる事はない
  2. 調整2波が1波の始点を下回らない事
  3. 調整4波が1波の高値を割り込まない事


この3つの条件のうち、どれか一つだけでも当てはまらないものがあれば、そのエリオットカウントは間違いであると覚えておこう。

 

 

<①:推進3波の長さが、推進波の中で最も短くなる事はない>

推進波には、1波・3波・5波の全部で3つ存在している。

その推進3波の長さは、1波と5波の少なくとも、いずれかよりは長い事が条件である。

 

間違った覚え方で有名なのが、「推進3波が、1波と5波よりも絶対に長くないといけない」と勘違いしている人が多い。

そうではなく、「推進3波が、1波と5波の中で最も短くなる事はない」が正解である。

 

一般的に長さは、「  推進3波 > 推進5波 > 推進1波  」となりやすい傾向があるようだ。

 

 

<②:調整2波が1波の始点を下回らない事>

推進1波に対する調整2波が、1波の始点ラインを下回ったら、それはエリオットカウントとして間違いである。


ただし、ビットコインなどの変動が激しい銘柄に関しては、1波の始点ラインをやや下回ったとしても、下髭をつけて強く上昇した場合は、OKと見なす場合もある。

その為、ローソク足の実体ベースで、1波の始点ラインを明確に下回ったら、完全に条件を満たせていないと判断すべきだ。

 

 

<③:調整4波が1波の高値を割り込まない事>

調整4波が、1波の高値ラインを下回ったら、それはエリオットカウントとして間違いである。


ただし、ビットコインなどの変動が激しい銘柄に関しては、1波の高値ラインをやや下回ったとしても、下髭をつけて強く上昇した場合は、OKと見なす場合もある。

その為、ローソク足の実体ベースで、1波の高値ラインを明確に下回ったら、完全に条件を満たせていないと判断すべきだ。

メリット

  • 長期・中期・短期、どの時間足にも対応できる
  • 大局的なトレンドを掴みやすくなる
  • 今後の値動きを想定しやすくなり、複数のシナリオを立てるのに役立つ
  • 現在の波動の特徴を活かすことで、利益確定や損切ポイントを決定できる
  • 他のテクニカル指標を組み合わせる事で、より根拠の多いトレードが可能となる

デメリット

  • 慣れないうちは、どこからエリオットカウントを引けばよいか分からない
  • 後付けになりがちで、短期的にはリアルタイムには不向き
  • 人によって引き方が異なるケースが多く、プロの目線と一致させづらい

hiroの見解

今回は、エリオット波動論の概要について解説してきた。

 

エリオットカウントがきちんと出来るようになれば、相場の流れを掴め、大衆の目線と一致させた取引が可能となるだろう。


私自身、エリオット波動論を実際によく活用しており、大局的なトレンドを把握したり、将来価格の目安を決める際に役に立っている。

 

しかし、エリオット波動論に対する否定派は、実は結構多いのだ。


デメリットでも紹介したように、エリオットカウントはその性質上、どうしても後付けになりやすく、出来上がったチャートなら、後からどうとでも言えてしまう。

 

その為、エリオット波動論を過信しすぎず、あくまで将来予測の参考程度に留めておくのが無難だろう。

エリオット波動論だけで分析するのではなく、これまで学んできた分析手法と組み合わせて活用する事で、より分析精度を高める事ができるはずだ。

まとめ

  • 相場にはサイクルがあり、値動きは一定のリズムに従って動いている
  • 相場は推進5波動・調整3波動、全部8つの基本リズムを1つの周期として繰り返す
  • 相場はフラクタル構造で、同じ波形が長期・中期・短期にも見られる
  • エリオット波動論は、3つの条件全てを満たす必要がある
  • 後付け理論となりやすいので、過信は禁物

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