大口取引戦略の見抜き方

順張りエントリーにおいて、大口の動向を把握しておく事は必要だと、前回の記事で解説した。

 

そこで今回は、実際に大口の動向を見抜く方法について解説していきたい。

前回の記事「大口取引戦略を見抜く重要性」をまだ読んでいない人は、先に目を通しておいてほしい。

大口取引戦略を見抜く重要性

 

この記事を読めば、実際にチャート上から大口の動向を把握しやすくなるので、大口と同じ方向にエントリー出来るようになるだろう。

その為、価格変動に惑わされる事も減り、より安定的に利益を出し続けれるようになるはずだ。

価格帯別出来高とは?

 大口の取引戦略を把握するには、価格帯別出来高を活用するのが有効的だ。

 

出来高と聞くと、下側に表示されるヒストグラムのような図をイメージするだろう。

BTC/USD 4時間足

通常の出来高では、その時間帯にどれくらいの取引量があったのかを示している。

 

それに対して、価格帯別出来高とは、何円の時に、どれだけの取引が行われたのかを、視覚的に教えてくれるツールである。

実際に、チャートに表示させた画像を見てほしい。

BTC/USD 4時間足

右にある黄色と青の、ヒストグラムのような図が表示されているのが分かるだろう。

これが、価格帯別出来高であり、見方は単純で非常に分かりやすい。

 

その価格帯での横棒が、長ければ長いほど、そこでは多くの取引が活発に行われた事を示す。

逆に、横棒が短い場合は、そこでの価格帯では取引がほとんど無かった事を示している。

それでは何故、価格帯別出来高を利用する事が、大口の取引戦略を把握するのに役立つのかを解説していく。

適正価格を把握する

私達が商品を購入する際は、その価格が通常と比べて安いか高いかを、常に意識して確認しているものだろう。

 

例えば、キャベツ1玉が100円なら凄く安いし、1玉500円で販売されてたら買う事はない。

 

このように、よほどの金持ちでない限りは、その商品の値段に必ず注目するものだ。

そして、安いか高いかを判断する為に基準となる価格、いわゆる通常価格である。

 

またキャベツを例に挙げると、生産者はキャベツ1玉を300円で売る事で、利益が出るとする。

それ以上で売れば、もっと利益が得られるし、それよりも低い価格で売ると利益が減る事になる。

 

キャベツの生産量が減り、供給が減少していくと、生産者は高い価格で売る必要が出てくるので、500円で販売し始める。

消費者は、いつもは300円で購入していたのに500円で販売されているので、買う人は激減していくだろう。

 

しかし、どうしてもキャベツを必要とする消費者は、たとえ500円でも購入するほかないので、一定の取引量が確認されるだろう。

しばらく500円で販売していても、ほとんど売り切れない為、生産者は仕方なく値段を下げて、価格はやがて通常価格である300円まで戻ってくる。

 


逆に、価格が値下がりするケースも考えておこう。

 

ある年では、天候に恵まれた影響を受け、全国でのキャベツ生産量が大幅に増えたとする。

需要は以前と変わらないが、キャベツの生産量(供給)が急激に上昇している為、全てを売り切るには価格を下げないといけなくなる。

 

通常では300円のところを、今回は100円で販売したとする。

すると、消費者は価格が安い事を好感し、いつもより多めに購入する事が予想される。

 

しかし、生産者にとっては、通常価格よりも安い価格で販売している為、当然利益も大幅に減少してしまっている。

供給も多いため、全てを売り切れる保証もない。

その為、生産者側が限界に到達する事で、値上げに踏み切るケースが予想されるだろう。

 

そして、100円セールで販売されていたのが、やがて通常価格である300円に戻ってくるという訳だ。

 

このように、商品には生産者(供給)と消費者(需要)がお互いに納得できる価格帯が必ず存在するものだ。

この価格の事を、適正価格と呼ぶ。

 

この適正価格を知っておかなければ、その商品の現在価格が安いか高いかを判別する事すらできず、損をしてしまう可能性が高いだろう。

それは、日常生活だけでなく、投資の世界でも同じことが言える。

 

例えば、ビットコインに初めて投資をする際は、適正価格など分かるはずがないだろう。

 

そこで活躍するのが、価格帯別出来高ツールである。

価格帯別出来高を見れば、どの価格帯で、どれだけの取引量があるのか一目瞭然。

 

沢山の取引が活発に行われているという事は、需要側と供給側がお互いに納得しているポイントであると言えるだろう。


逆に、取引量がほとんどない価格帯では、需要側と供給側の片方が不満を持っていると思われ、不適正価格である可能性が高いだろう。

 

このように、価格帯別出来高ツールを利用すれば、取引量が多い価格帯である適正価格ポイントを発見できるようになり、その銘柄の購入計画を立てるのに役立つはずだ。

 

新しい銘柄に投資する際は、まず適正価格はいくらなのかを把握するようにしよう。

価格帯別出来高の見方

ここからは価格帯別出来高を用いて、大口の取引戦略を把握する方法を解説していく。

 

大口の取引戦略については、別の記事で解説したが、ここで復習しておこう。

資金豊富な機関投資家などは、一度に買い・売りを行うと、価格が急変動してしまい、思ったように利益が得られなくなってしまう。

そのような事態を防ぐ為にも、4つのフェーズに分けて、取引戦略を立てているのが一般的である。

  1. アキュムレーション:買い仕込み
  2. マークアップ:価格の釣り上げ
  3. ディストリビューション:利確売り
  4. マークダウン:価格を叩き落す

 

この戦略が、どの価格帯で起こりやすいかをチャート上から読み取る必要がある。

 

基本的に、アキュムレーションとディストリビューションは、HVNで起こりやすい。

一方で、マークアップとマークダウンは、LVNで起こりやすい。

それでは、HVNとLVNの概要について解説していく。

1. ハイボリュームノード(HVN)とは?

ハイボリュームノード(HVN)とは、ある価格帯付近で見られる出来高のピークである。

 

出来高がかなり多いという事は、つまりその価格帯では、買いと売りの攻防が激しく、そして長期間続いている事を表し、価格はレンジ相場を形成している事が多い。

HVNでは、沢山の取引が行われたという観点から、適正価格として意識されやすい。

 

しかし、沢山の取引が行われたからと言っても、全員が利益を得られているとは限らない。

なぜなら、大口が素人を振り回しながら、買い占めや売り抜きを行っている影響で、沢山の取引が行われているからだ。

 

もう少し詳しく解説しておこう。

 

レンジ相場形成中には、買い勢と売り勢が長期間戦っていたからこそ、価格は拮抗し続けていた。

そして、結果的には大きく上昇する格好となり、買い勢が勝利し、売り勢が敗北した事になる。

 

HVNは、アキュムレーションが起きやすいポイントであり、レンジ相場が形成され、価格帯別出来高が大きくなると、大口が買い仕込んでいる可能性を疑っていこう。

 

つまり、大口などの買い勢は爆益となっているものの、素人などの売り勢は莫大な損失、あるいは含み損を抱えた状態となっている。

その為、レンジ相場付近でショートポジションを保有している投資家は、価格上昇後に再度、この付近まで下落してきたら建値決済して、ポジションを清算する動きが推測される。

 

これらの観点から、価格がHVN付近に到達すると一旦、価格が停滞しやすい傾向がある。

 

その為、HVNは下落時にはサポートライン、上昇時にはレジスタンスラインとして意識されやすいだろう。

 

逆に、サポートライン・レジスタンスラインとして意識されやすいHVNポイントを、強く突破した場合は、その次にあるHVN付近まで一気に進んでいくケースが多い。

HVNの特徴をまとめると、下記のようになる。

  • 価格がHVN付近に近づいてくると、上昇・下落の勢いが落ちやすい
  • 価格がHVNを強く突破した場合、突破した方向に勢いを増して進みやすい
  • HVNでは、アキュムレーションやディストリビューションが起きやすい

2. ローボリュームノード(LVN)

ローボリュームノード(LVN)とは、ある価格帯付近で見られる出来高の低迷である。

 

出来高が少ないという事は、その価格帯での取引がほとんどなく、不適正価格である事を示唆しており、価格はトレンド相場であるケースが多い。

LVNは主に、急騰急落の結果生まれるもので、不適正価格の領域である為、結局すぐにHVN付近にまで引き戻されやすい。

この急騰急落とは、大口主導によるマークアップ(価格の釣り上げ)やマークダウン(価格を叩き落す)などの影響を受けているものと推測される。

 

キャベツの例を挙げたように、価格が高すぎれば誰も買わない為、販売側としては価格を引き下げるしかなくなる。

その為、急騰しすぎた場合は、供給側は儲かるが需要側は高すぎて買えなくなるので、結果的にすぐ価格は適正価格のHVN付近まで引き戻されるという構図。

 

価格が以前のLVN(不適正価格)に近づくと、その価格帯を一気に突破する、もしくは急速に跳ね返る可能性が高くなる事を覚えておこう。

 

LVNの特徴をまとめると、下記のようになる。

  • 価格がLVN付近に近づいてくると、一気に突破または跳ね返りやすい
  • 価格がLVNを強く突破した場合、次のHVNまで進むケースが多い
  • LVNでは、マークアップやマークダウンが起きやすい

価格帯別出来高を用いて分析する手順

1. 有料版Trading viewを開く

私はチャート分析をする際は、Trading Viewツールを利用している。

世界的にも有名で、無料アカウントでも十分に役立つと思う。

しかし、価格帯別出来高をチャートに表示させるには、有料アカウントにアップグレードする必要があるので、まずは登録を済ませておこう。

 

2. 長期時間足チャートを開く

まずは、過去に取引された全てのチャートが、画面に映りこむように長期時間足チャートを開く。

月足や週足チャートなどを開くといいだろう。

 

今回は、ビットコインの週足チャートを実際に見ていこう。

BTC/USD 週足

これにより、全体の取引状況が大まかに把握できる。

3. VPVRインジケーターを表示

「インジケーター&ストラテジー」をクリックする。

 

検索フォームに「VPVR」と入力し、チャートに表示させる。

 

VPVRの設定項目を、以下の画像の通りに設定する。

 

 

以上で設定は終了! 下記のチャートのように表示されていれば、問題なし!

 

4. 大口の取引戦略ポイントを特定する

大口の買い仕込み(アキュムレーション)が起こりやすそうなポイントを探す。

 

その為に、最も出来高が伴う価格帯であるHVNに水平線を引いてみる。

赤いラインの範囲内が、HVNゾーンであり、この価格帯では大口の買い仕込みが継続的に行われていた事が推測される。

そして、買い仕込みが終了した事で、次のフェーズであるマークアップに移行し、実際に強烈な上昇トレンド転換が起こっている。

 

仮に、価格が大暴落したとしても、赤いラインの範囲内であるHVN付近では、一旦下げ止まる可能性は非常に高く、ここまで下落してきた際は絶好の現物買いポイントとなる。

 

これと同じ分析方法で、短い時間足でも試してみよう。

BTC/USD 4時間足

上図は、4時間足のビットコインチャートだが、先ほどの見方と概ね同じである。

 

最も出来高を伴うHVNに水平線を引き、このゾーンでは大口の買い仕込みが行われた痕跡があるのが分かる。

そして、次のマークアップで大きく上昇に転じている。次に下落した際は、HVNゾーンで一旦は下げ止まる可能性が高いだろう。

 

このように、価格帯別出来高を活用する事で、今後の押し目買いの目安が分かるだけでなく、大口がどの価格帯で買い仕込み、どの価格帯で利確売りをし始めているのかを、ある程度把握する事が可能となる。

hiroの見解

この記事では、価格帯別出来高を用いて大口の取引戦略を把握する方法について解説してきた。

 

大口の取引戦略が把握できるようになれば、大口の餌食になる可能性が低下し、より安定的な収益を出せるようになるだろう。

そして、現物を購入する際の判断材料としても、非常に役に立つはずだ。

 

目の前の激しい値動きに惑わされる事なく、あらかじめどの価格帯で買い、どこの価格で利確するのかを決めておき、ルールに則った取引ができる投資家を目指していこう。

まとめ

  • 大口の取引戦略を把握する為には、価格帯別出来高を活用する
  • 商品や銘柄を買う時は、まず適正価格を把握すること
  • HVNとLVNをチャートから読み取り、今後の予測の参考にする

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